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広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 基礎生命科学部門 ウィルス学教授 坂口剛正(さかぐち たけまさ)先生(昭和60年大卒) |
![]() さて、インターフェロン(INF)のお話ですが、ウィルスに感染し異常な核酸ができると、シグナル伝達によりINFβが産生され、次いで杭ウィルス蛋白が細胞の中に溜まり細胞は警戒状態になります。そこにウィルスが感染し2本鎖RNAができると、ウィルスが感染したと認識してスイッチが入り、宿主細胞やウィルスの蛋白合成を阻害するPKR等の酵素が活性化され、細胞がアポトーシスに陥ってウィルスごと細胞が自殺をして排除するという仕組みです。このようにINFはウィルスに感染した細胞が放出して、自己及び周辺の細胞を抗ウィルス状態にするサイトカインです。しかしウィルスの方もそれを無力化する機構を持っていて、マウスに肺炎を起こすセンダイウィルス(SeV)では、そのC蛋白が宿主細胞の転写因子STAT1に結合しINF産生を阻害します。坂口先生のグループではこのSTAT1-C結合複合体の結晶構造を解明されました。更にこの結合のアッセイ系を用いて、20万種の化合物ライブラリーの中から、9個の結合阻害剤候補を得ておられ、現在これら候補化合物の詳細な検討を行っておられます。将来的にSeVと非常に近縁なヒトパラインフルエンザウィルスについて、その抗INF活性を無力化して増殖を阻止する薬を得ることを目標としておられます。これが成功すると、ヒトの疾患の他のウィルスについても、同様のアプローチによって、新たな抗ウィルス薬の開発につながる可能性があるとのお話でした。 |
広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 外科学(旧第一外科学)教授 末田泰二郎(すえだ たいじろう)先生(昭和53年卒) |
![]() まずTEVARは胸部下行大動脈瘤に対して行われるようになりました。従来の下行大動脈瘤手術では、開胸して部分体外循環を用い大動脈を遮断し瘤を人工血管で置換するのに5- 6時間かかっていましたが、経カテーテルステントグラフトでは開胸せずに1時間程度で済んでしまいます。また、鎖骨下動脈、総頸動脈が分岐する弓部大動脈瘤や、腎動脈などの分岐する腹部大動脈瘤に対しても、あらかじめこれらの主要血管分枝を人工血管で再建しておいて、大動脈にステントグラフトを入れる事で、適応範囲が広がっています。広大病院では、商業用ステントが使用可能になったこの5年間に228例施行しております。従来の手術に比べ、低侵襲性と簡便性のメリットはありますが、元々の血管が脆いため、解離を起こしたり脳梗塞を起こしたり、遠隔期に脆い血管が裂けるなどの合併症も時に見られるのも現実とのお話でした。 次いで、高齢者が増加し動脈硬化性病変が増えることに伴い、世界的に大動脈弁狭窄症が増加してきました。従来は人工心肺下の開心術で大動脈弁置換術がなされていましたが、最近経カテーテル的に大動脈弁置換術を行うTAVIが行われるようになってきました。これは、生体弁を折り畳んで、大動脈弁の拡張用のバルーンと共にカテーテルに納め、通常は経大腿動脈アプローチで、あるいは大腿動脈が狭窄などで使用できない時は経心尖アプローチにて、狭窄した大動脈弁をまずバルーンで広げそこに人工弁を装着するというものです。人工弁の位置が心臓側にずれると弁が逸脱し大変危険で、末梢側にずれると冠動脈口を閉塞して心筋梗塞となるため大変慎重な操作が求められます。広大病院でTAVIを開始して11ヶ月で、高齢や条件の悪い方を中心に14例施行され全例概ね良好な経過です。 |
広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 統合健康科学部門
小児科学教授 小林正夫(こばやし まさお)先生(昭和53年卒) |
![]() 小児の死因の常に上位を占める小児がんに対して治療を進める中で、造血幹細胞移植の適応疾患が増えています。元々はリンパ性白血病で始まりましたが、現在では化学療法がよく効くほとんどの小児がんで適応となっております。また慢性肉芽腫症、好中球減少症などの先天性免疫不全症や再生不良性貧血、骨髄異型性症候群などでは、造血幹細胞移植で完全に疾患が根治されます。造血幹細胞移植の手技の基本は、前処置と呼ばれる自己の骨髄細胞を破壊するために抗がん剤と放射線治療を行い、あらかじめ採取しておいたドナー由来の造血幹細胞を輸注します。これが骨髄で生着し新たな造血を開始するまでの間、2-3週間無菌室管理となり、生着した後にはGVHDを予防しなければならないなど大きなハードルがあります。悪性腫瘍の場合、前処置と別に抗がん剤治療をしたりもします。移植法の分類としては、ドナーの側から自家移植や同種移植(血縁者や、骨髄バンクなどの非血縁者)に分けられます。また骨髄細胞を用いるものと、末梢血、臍帯血を使う場合があります。前処置も強い前処置をするものから、あまり骨髄を壊さないものまであります。小児悪性腫瘍(血液がん、固形がん)の場合、移植をすることにより約50%が助かっております。再生不良性貧血等では8割から9割が助かるような時代になってきております。小林先生が教授になられた2003年から13年間で192例220回の造血幹細胞移植が行われました。先進治療病棟に4室のバイオクリーンルームを作って頂いて移植件数が更に増加しており、特に慢性肉芽腫症、好中球減少症などの先天性免疫不全症の移植では広大病院は定評があり、移植患者さんが全国から来られています。同種移植の場合、HLAの8抗原を一致させるのが拒絶反応の点で有利ですが、骨髄バンクで非血縁の場合7/8〜8/8のHLA一致率が必要です。そうするとドナーが見つからないことも3割くらいあり、それを補うために親子間での血縁ハプロ移植を行っています。これはHLAが4/8しか合わないためGVHDはやや強いですが何とかコントロールできるようになっており、この血縁ハプロ移植はほとんどの患者にドナーが見つかる(兄弟で75%、親子なら100%)という利点があります。ところで、これら移植患者さんの家族が安価で長期に宿泊できるファミリーハウスも、小児がん拠点病院の認定評価項目に入っており、この度、広大病院の前の出汐1丁目に造って頂きました。運営は基金でなされており、広仁会会員の皆様のご寄付もよろしくお願いいたします。 今回で第三回の特別講義では、我々一般の広仁会会員が、普段聴くことのできない広島大学医学部の研究のお話をおうかがいし、新鮮な感動のひとときでした。 |