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平成27年ホームカミングデイに参加して
― 順天堂大学医学部総合診療部教授 小林 弘幸先生 講演会 ―


 平成27年11月14日(土)霞祭の日に、霞キャンパスで第9回広島大学ホームカミングデイ霞部局合同企画講演会が行われました。今回は順天堂大学医学部総合診療部教授の小林弘幸先生を招聘し、「なぜ『これ』は健康にいいのか?」と題して講演会が開催されました。先生の講演会に参加して参りましたので報告いたします。

1. はじめに
 「健康とは何ですか?」と学生に聞くと、大抵は「病気にならないこと。」「元気でいること。」と言う答えが返ってくるが、私の考える健康とは「体の65億の1つ1つの細胞にいかに質のよい血液を供給するか」という事だと考える。今日のように天気の悪い日には、体調を崩して病院に来られる患者さんが多くなるが、爆弾低気圧などで気圧が20hPa低下すると、血流は20%位低下する。私は小児外科医で、小腸や肝移植をしているので、血流が改善すると元気になるのを身をもって感じている。世の中のミスや事故は、余裕がないか、自信がないか、不安や緊張などが原因で体のバランスが崩れ、血流が低下して起こる。

2. 自律神経が大切
 自律神経は血管系をコントロールしており、自律神経のバランスが乱れると変調が起こる。現代はストレス社会で、スマートホンなどの光刺激も交感神経優位となり悪影響がある。正常の人は午前中は交感神経優位で夕方になると副交感神経系が上がって来るが、ずっと交感神経優位の人が増加しそれにより不眠症などが増えている。交感、副交感神経の作用のバランスは1:1が理想で、偏りすぎてはいけない。交感神経は年をとっても機能があまり低下しないが、副交感神経機能は加齢により顕著に低下する。特に男性が女性より早期に低下し、男性は30代、女性は40代から低下する。副交感神経が低下すると血流が低下し、NK細胞活性も低下し癌になりやすくなる。男性の平均寿命が女性より短いのはこの為であろうというのが我々の仮説である。イライラしたり怒るのは、交感神経優位となりよくない。手術の術者が息を止めて手術をするのは交感神経を刺激しており、あまりいいことではない。ゆっくり息をして、リラックスして手術をする方がうまく行き結果も良好なことが多い。ゴルフの石川遼選手もタイガーウッズ選手がゆっくり歩くのを見習ってから成績が上がった。いつもニコニコしているとNK活性も上がり、体調も良くなる。医者もニコニコしていると、その患者さんもニコニコして病気も治りやすくなる。

3. 腸内細菌も大切
 また、主に小腸内に100〜500兆個いると言われている腸内細菌が、健康の質に大きな影響を及ぼしている。腸内にクロストリジウムディフィシルなどの悪玉菌が多いと、腸管内でアンモニアなどが沢山産生され、それが門脈から吸収されて肝にダメージを与える。肝で処理できなかった有害物質は体循環に入る。現在、潰瘍性大腸炎などで便移植という治療法が始まっている。コントロール不良な潰瘍性大腸炎の患者さんに、健康な親族から採取した腸内細菌を移植すると潰瘍性大腸炎の活動性が沈静化する。腸内に悪玉菌が多いと太るが、痩せている人の腸内細菌を移植すると痩せる。高脂血症の人の腸内フローラを移植すると高脂血症にもなる。このように腸内フローラは重要な役割をしているが、腸内の善玉菌であるビフィズス菌は加齢と共に減少するため、これを補わないといけない。動物実験では、腸内環境を良くすると副交感神経系の機能が上昇する。大腸癌予防のためにも水溶性食物繊維と、ビフィズス菌を多く含む発酵食品の摂取が重要である。今後の医療は、いかに病気にならないようにするか、という事をやって行かないといけないと考えている。

 以上簡単にご報告申し上げました。小林弘幸教授は伝統ある順天堂大学の小児外科医でもあり、そのご経験からの大変興味深いお話でした。

広報担当 山東敬弘(昭和58年卒)